寒い
気が付いたら夏が終わっていて、毎日カーテンを閉め切った薄暗い家に引き篭もり布団もかけず半袖で寝ていた僕は、当然の如く風邪を引いた。
何も考えなくて済むようにと日々を忙しなく消化していたのに、布団にへばりつくことを余儀なくされそこで意識を手放すか考え事をするかの二択を迫られることになった。
シロクマ効果という言葉を聞いたことがある。
シロクマのことは考えるなと言われると、シロクマのことは考えてはいけないという命令を自分に下すことで自分がシロクマのことを考えていないか確認する必要が生まれ、結果的にシロクマのことを考えてしまうというやつだ。
羊を数えて眠ろうと足掻いてみたり部屋に現れた虫のことを考えたりと色々と試してみても、最終的に思い浮かぶのはいつも同じこと。
この人生、目を背けたくなる出来事ばかりだ。いっそのこと完璧な地獄だったら思い残すこともないのに、時々褒美のように幸せが落ちてくるから余計に腹が立つ。
幸せだと思っていたものが突然牙を剥くこともある。
嫌いだと思っていたものに慰められることもある。
時間の経過は何の解決にもなった試しがないが、何度でも縋ってしまう。
夜が明けた。右膝が痒い。あのときの虫かもしれない。
少し眠くなってきた。